逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
麗香と麗人はそのまま、駅前のロイヤルホテルの1階にあるレストランにやって来た。
ゆっくるちディナーを食べながら、麗香は麗人に暫くの間、社長の秘書になってほしいと頼んできた。
「秘書だなんて、全く経験ありませんから無理です」
「秘書と言っても特別な事はないのよ。部長に頼まれている仕事と、そんなに変わりはないから」
「それでも…」
フイッと、麗香が視線を入り口の方へ向けた。
「あ! ここよ」
手を振って誰かを呼んでいる麗香。
麗人は誰だろうと振り向いた。
すると…。
やって来たのは部長の麗人だった。
嘘…なんなんだ? この展開は。
こんなシーンは前の時はなかった筈だ。
母さんが、僕と優衣里さんを引き合わせるなんてありえなかったけど。
僕が優衣里さんの中に入った事で、あの動画が公になり婚約破棄になり、朝丘さんがムキになってきたからかこのできごとがおおきくかわってきているんだろうなぁ…。
「部長、ごめんなさいね忙しいのに呼んで」
部長の麗人は優衣里がいるのを目にすると、ハッと驚いた目を浮かべた。
「こっちに座って」
麗香は自分の隣に部長の麗人を座らせた。
「先に注文しておいたの。嫌いなものは、殆どなかったわよね? 」
「はい…」
この展開は、どうなるのだろうか?
麗人はちょっと伏し目で様子を見ていた。
「あのね、伊集院さんに暫くの間だけど社長秘書を頼む事にしたの」
「え? …」
メガネの奥で、部長の麗人の目がちょっと泳いでいた。
「朝丘さんが、なんだかすごく伊集院さんに怒っていて。ひっぱたいたりしていたの、だから一緒に仕事していると危険だと思うの。秘書の仕事と言っても、特別な事はなくて。部長に頼まれる仕事と、殆ど変わりはないからお願いしようと思って」
「それは、社長も了承の上での事ですか? 」
「ええ、もちろんそうよ」
部長の麗人はチラッと、優衣里を見て少し考え込んだ目を浮かべていた。
「朝丘さんに加えて、萩野さんも何か企んでいるようだから。このまま伊集院さんを、営業部に置いておくのはとても危険だと思うのよね」
「…それでは、朝丘さんと萩野さんに部署を移動してもらてはどうでしょうか? 」
「え? 」
部長の麗人はゆっくりと視を上げて、優衣里を見た…。
「自分は…伊集院さんがいてくれなくては困ります。代わりの人が来ても、仕事内容を教えなくてはなりませんので。その時間が非常に勿体ないと思います。今回の問題は、自一番の原因でもありますので、責任があります。なので、営業部内で良からぬことを企んでいる。朝丘さんと萩野さんに、部署移動をしてもらいたいと自分は思います」
麗香はしばらくじっと部長の麗人を見ていた。
「社長の命令は絶対だと言う事は、自分も承知しております。しかし、業務に支障が出てしまう事は避けたいのです。伊集院さんの身を護る為の事でしたら、問題の2人を移動させる事が賢明だと思います」
じっとみていた麗香が小さく笑った。
そっか…自分の力で、伊集院さんを護りたいのね。
ずっと想いている人がやっと傍にきてくれたのだから、離したくないわよね。
「そう、部長の気持ちはよく分かったわ。その胸を社長に話してみるわね」