逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~

 注文した料理が運ばれてきた。
 レストランおすすめのコース料理で、今日はサーロインステーキである。

「わぁ、美味しそうね。冷めないうちに食べましょう」
 
 きっと離したくないって思ったんだよね。
 やっと傍に来てくれたのに、なんで離れ離れにならなくてはならないのかって。
 動くならあいつ等だろうって思ったんだよね?

 そう思った麗人は、いつもより顔がほころんでいた。


 その後は食事をしながら他愛ない話をして、楽しい時間を過ごした。
 ぶっきらぼうな部長の麗人だが、話していると表情も綻んでいつもより優しい口調で話してくれた。
 麗人も自然と笑顔になりすっかり溶け込んでいた。


 しかし。
 その様子を隠れて見ていた彩がいた。

「面白いものが撮れたわ」

 隠し撮りした写真を見て、彩はニヤッと笑っていた。

 

 
 翌日。

 いつものように出勤してきた麗人。
 今日は長い髪を綺麗に編み込みしてもらい、一つにまとめている。
 メガネをかけずにハッキリと顔を見せている姿は、女優も顔負けなくらいとても綺麗である。

「おはようございます」

 挨拶をして麗人はいつものように席に座り、仕事の準備を始めた。

「おい! 」

 どすのきいた文彦の声に、麗人はちょっとだけムッとして目を向けた。

「お前、浮気しているのか? 」
「はぁ? 」

 バン! と、デスクの上に沙心を叩きつけて来た文彦。

 何の写真だ?
 麗人は写真を手に取って見た。

 すると…。

「はぁ? 何これ…」

 その写真は麗人と部長の麗人がキスをしている写真だった。
 背景は駅前のロイヤルホテルの前のようだ。

「写真の日付け、お前が婚約破棄を申し出る前だぞ! 」

 日付?
 麗人が写真の日付を見ると、先月の日付が表示されていた。

「これはありえない! この日は、出張に行っていたからここにはいなかったからな! 」

 勢いよく写真を突き返した麗人を、文彦はキョンとした目で見ていた。
 その目を見て麗人はハッとなった。
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