逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
しまった…つい感情に流されて、自分の口調で言い返してしまった。
しかも出張って、優衣里さんじゃなくて僕が行っていただけだから…。
きょんとなっている文彦をよそに、気をとりなおした麗人。
「この写真、どうしたのでしょうか? 全く心当たりがありません」
「彩が友達から送てもらったそうだぞ! たまたま駅前を通りかかったら、キスしている男女がいて写真をとったらしい」
「先月の写真を、何故今更だされるのですか? もっと早く、出せたはずですが? 」
「彩も知らなかったらしい、昨日会った友達が話してくれたらしいからな」
「そうでしたか。でも、残念ですが何も心たりがありませんので。この写真を、調べさせてもらってい宜しいでしょか? 」
文彦はニヤッと笑った。
「その必要はない。お前に頼めばきっと、親父の力を使ってねじ伏せてくる可能性がある。だから、彩の友達に頼んで調べてある。これは確実な証拠だ」
そうきたか…。
「そうですか。では、どうしたいのですか? この写真を見せて、浮気していたと言われて何をしたいのでしょうか? 」
「そうだな。とりあえず、慰謝料請求させてもらおうか」
「慰謝料ですか? 」
「ああ、俺はお前にプロポーズまでしているのに一方的に婚約破棄を告げられた。だが、そうなる前にお前は浮気していた。俺はその事に対して、深く傷つき精神的打撃を受けたからな」
むちゃくちゃな屁理屈だなぁ…。
(大丈夫ですよ。いっそ、裁判でも何でもやらせてあげて下さい。こちらには、勝てる証拠があります。朝丘さんが、私に酷い暴力をふるっていた証拠がありますから)
え? 酷い暴力?
(ええ、結婚してからはずっとでした。でも、結婚前にも何かといちゃもんをつけてきて、直ぐに殴って来ていました。その現場を、動画で押さえています)
そんな状態で彼と結婚したのですか?
(父に反抗していたので。酷い男と結婚したのは、あんたのせいだと…)
なるほど…。
「朝丘さんの好きにして下さい。慰謝料を請求されたいのであれば、それなりの手続きを踏んで頂ければ対応しますので」
「へぇ、お前居直るのか? 」
「どうとでも言って下さい。でもこれで、心置きなく婚約解消が出来ます」
ドン! と勢いよくデスクを叩いた文彦。
その大きな音に、周りの社員達も驚いて注目した。