逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
部長の麗人は目だけ文彦に向けた。
「朝丘さん、ここは職場ですから個人的な話は慎んで下さい」
ボソッと部長の麗人が言った。
「偉そうに言いやがって、誰のせいでこんな事になっていると思っているんだ! 」
ギロっと部長の麗人を睨みつけた文彦。
「朝丘さん、警告しておきます。騒ぎを起こせば、貴方自身が困ると思います。ここはあくまでも職場なので、業務がスムーズに進行できなければかなりの問題になります」
「ああ、そうですか。そんな口をきけるのも、今だけだ! 」
捨てセリフを吐いて、文彦は自分のデスクに戻ると外回りの準備をしてさっさと出て行った。
隣で聞いていた彩はニヤッと笑っていた。
いい気味だわ、私を置いて社長の奥さんと食事して、私の誘いを断った部長まだ呼ぶなんて。
優衣里のくせに生意気よ!!
彩も文彦の続いて外回りの準備を始め、さっさと出て行った。
部長の麗人はそのまま冷静な顔をして仕事を続けていた。
その後。
朝の騒動は鷹人の耳にも入った。
「やれやれ、とんでもない事を仕掛けてくるものだな。だけど、そんな事をしていれば嫌でも婚約解消されてしまうじゃないか」
「そうよね、でもきっと目的はお金じゃないかしら? 浮気していたから、慰謝料払えとか言って高額請求したいのではないかしらね」
「そんなにお金が必要なのか? 朝丘さんは」
「実家は保険代理店らしいけど、裏では朝丘さんはかなり借金を作っているって噂がるわ。毎晩のようにキャバクラで豪遊しているのも、かなりツケが溜まっているようで。株もやっていて、最近は暴落しているようなの」
「欲にかられてしまうと、そうなってしまうからな。早めに移動してもらうか」
やれやれと、ため息をついて鷹人は書類を書き始めた。