逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
飛び降りたら…彼女に?
「…伊集院さん…。伊集院さん! 」
呼ばれる声と共に、ゆっくりと光が差し込んでくるのが見えて来た麗人。
ああ…もうあの世に到着したのかな?
眩しい光に包まれて、ハッと目が覚めた麗人。
「ここは…」
ぼんやりした視界から見えてくる風景を見渡すと、そこは沙原コンサルティングのオフィスで営業部だった。
これは…僕が見ていた思い出か何かか?
あの世に行くとこうやって自分の思い出が見えるのかな?
「伊集院さん! 」
すぐ傍で呼ばれる声に、ハッと驚いた麗人は声の方を見た。
するとそこには。
部長である自分が立っていた。
僕がいる…そっか、思い出の中なんかだらいても当たり前か。
でも、なんで伊集院さんを呼んでいるんだろう? しかも、僕に向かって呼びかけているようだけど。
「伊集院さん? 大丈夫ですか? なんだか、すごく驚いているようですが」
ん?
麗人は辺りを見渡した。
しかしどこにも、優衣里の姿が見当たらない。
まさか隣りに?
そう思って隣を見るが、隣の席は違う男性社員がいた。
「伊集院さん、これ提出して頂いた書類です。印鑑を押しましたので、社長室へ持って行ってもらえますか? 」
言いながら机の上に置かれた書類を見て、麗人は驚いた。
その書類は、いつも優衣里が作成している書類で最終印を自分が押して社長に提出してもらう書類だった。
なんでそんなものを自分に渡してくるのだろう?
「おい、優衣里大丈夫か? 」
向かい側のデスクから覗き込んできたのは、文彦だった。
相変わらずブランドメーカーの高級シャツを着て、チャラそうな恰好をしている文彦。
こいつ。
優衣里さんを殺しておきながら、何を平気な顔をして話しかけて来ているんだ?
…ってか、今「優衣里」って呼んだ? 僕に向かって。
「優衣里? どうかしたのか? そんな顔をして」
麗人は困惑しながらも怒った目をして文彦を見ていた。