逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
 
 定時の鐘が鳴り麗人が帰り支度をし始めると、文彦はギロっとした目をして立ち上がり麗人の傍へツカツカと歩み寄って行った。

「おい! お前のせいだからな! 」
「はぁ? 」
 麗人は呆れた目をして文彦を見た。
 怒りを露にした文彦は、焦りもあるのかかなり興奮している様子だ。

「お前が婚約破棄を言い出し、浮気なんかしているから! 俺は精神的に不安定になっているんだ! 」
「何を言い出すかと思えば…。自分の不祥事を人のせいにする気ですか? 」
「黙れ! お前から、たんまりと慰謝料ぶんどっているからな! 」
「慰謝料ですか…」
 呆れた麗人は小さくため息をついた。

「朝丘さん、言っている事が支離滅裂ですよ。これだけは言っておきますけど、自分は浮気なんてしていません。婚約破棄を申し出ているのは、貴方が多額の保険金をかけるにあたり。本来結婚して、夫婦になるべく相手に相談するのではなく。全く関係がない、友達に相談された事がきっかけです」
「なんだと? 」
 目くじらを立てた史彦を、麗人はフッと笑った。

「それに朝丘さん。…貴方はすぐに暴力をふるう人です」
「はぁ? 」
「申し訳ございませんが、貴方がして来た事はちゃんと証拠を残しています」
「証拠? 」
「はい。いずれ分かる事です」

 それだけ言うと、麗人はそのまま帰って行った。

「なんだあいつ…。急に強くなりやがった」

 文彦の様子を見ていた彩が、傍に歩み寄って来た。

「ねぇ、文彦さん。これは、社長の力を使うのがいいかもしれないわよ」
「社長の? 」
「ええ、私ね。社長の息子と、親しい仲になったの。だから、上手く丸め込んであげるわ」
「へぇー。じゃあ、ついでにあの部長も消してもらえるか? 」
「そうね、ちょっと惜しいかもしれないけど。なんだか、最近邪魔ばかりしてくるものね」

 怪しい含み笑いを浮かべた文彦と彩。
 
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