逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~

 それから数日後。
 
「おはようございます」
 上機嫌な声で彩が出勤してきた。

 鼻歌を歌いながら出勤してきた彩は、わざとらしく左手を眺めている。

「ん? あれ? 彩その指輪どうしたんだ? 」

 文彦が彩の左手の中指を見てわざとらしい声をあげた。

「あのね、私。社長の息子さんと婚約したの」

 はぁ?
 
 先に出勤していた麗人が耳を疑った。
 席に座っていた部長の麗人も、ギロっと視線を上げて彩を見た。

「社長の息子? お前、社長の息子と付き合っていたのか? 」
「ええ、そうよ。知り合たのはつい最近て、言って良いほどなんだけど。相手から結婚して欲しいって、急接近されたの。この指輪すごいでしょう? 」

 キラキラと光るダイヤの指輪を見せつけている彩。


 どうゆうつもりだ? そんな事ありえないだろう?

 麗人は部長の麗人を見た。

 部長の麗人は怒りを抑えている目を、必死に隠しているようだ。


「このことは社長も承認しているのよ。もうすぐ入籍するの」
「へぇー…。じゃあ、お前は社長夫人になるのか? 」
「そうゆう事になるわね」

 文彦と彩はすっかり盛り上がっているが、周りはちょっとしらけているようだ。

 部長の麗人はスッと席を立って、外へ出て行った。

 
 麗人は社長室へ届ける書類をさっとまとめて、麗人に続いて外へ出て行った。


 麗人が廊下を歩いてくると、少し離れた場所で窓の外を見ている部長の麗人がいた。
 なんだか悔しそうな表情を浮かべている部長の麗人。
 
「部長…」

 麗人が声をかけると、部長の麗人はハッと表情を変えた。

「どうかされましたか? 」
「…いえ…」

 何でもないと言わないばかりの顔をしているが、かなり怒りが爆発しそうなのは麗人には判る。
 ありえない事をあんなに大きな声で言われて、それでも怒りを我慢している。

「部長、萩野さんの話は信用しない方がいいです。昔から、彼女は嘘ばかりつていますから」
「はい…。それは、自分も感じています」
「社長の息子と婚約したとか、ありえないと思います。つい最近まで、朝丘さんと噂があった人ですから」
「そうですね…。いずれ分かる事だと、自分も思っています」

 少しだけホッとした表情になった部長の麗人。
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