逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
「なんだ、朝から2人して密会しているのか? 」
後ろから文彦がやって来た。
「なぁ優衣里。彩は、俺とは何も関係がない事を証明する為に、社長の息子と婚約したらしいぜ」
「え? 」
「俺と彩が密会していて、親密な仲だと言われてショックだったらしい。だが、社長の息子が慰めてくれたんだとよ」
むちゃくちゃな話だ。
呆れた麗人はそのまま歩き出し、社長室へ向かった。
「おい、ちょっと待てよ! 」
文彦は麗人を追いかけた。
「彩が俺とはなにも関係ないって、証明されたろ! それでも婚約破棄をする気か? 」
「その意志は変わりません」
「じゃあ、慰謝料請求されてもいいんだな? 」
「公の場で判断してもらいましょう。そのことは」
そのままさっさと歩いて、麗人は社長室へ向かった。
文彦はとりあえず時間も迫っているため、外回りに出る事にした。
そのまま麗人は社長室へ向かった。
いつものように鷹人に書類を届けに来た麗人。
「有難う、お疲れ様。なんだか、朝から営業部は賑わっていようだが、何かあったのかい? 」
「ええ、大ありです」
ほう? と、眉を上げた鷹人。
「朝から、萩野さんが。社長の息子さんと、結婚が決まったと大騒ぎしていますから」
「え? 」
ちょっとムッとした目で鷹人を見ている麗人。
鷹人は麗香と顔を見合わせた。
「もし本当なら、この場でお祝いの言葉をお伝え致しますが…」
「それはないよ、私は何も聞いていないから」
「そうですか…。婚約指輪までもらったと、見せていましたので。本当かと思ったので」
「いや、間違いないから安心していいよ」
安心していいよって…なんで?
麗人の顔を見て、鷹人はクスッと笑った。
「ねぇ、伊集院さん。前から思っていたんだけど、私の息子の事を知っているよね? 」
「な、なんでそんな事を聞くのですか? 」
「いや、高校の卒業アルバムに。伊集院さんと同じ名前の人が、載っていたし。大学でも、見かけたから」
「そうなんですか? 」
「伊集院さんは、ひと際目立つから。一度見たら、忘れられないんだ。息子が良く、言っていたからね」
そう言えば…。
高校生の時、好きな人がいると話した時、父さんは何故か伊集院さん? って聞いたっけ…。
確かに他の男子達も、伊集院さんに注目していたからなぁ…。
「きっと息子も、今でも伊集院さんを忘れていないと思うよ」
なにこれ…。
こんな事、父さんに言われたのか? 優衣里さんは…。
コンコン。
「失礼します」
部長の麗人がやって来た。
え? なんで来たんだ?
驚いた麗人は、ここにいていはいけないと思い、慌ててその場を去った行こうとした。
が…
スッと、手を握られ部長の麗人が引き止めてきた。