逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
純也の目的

 社長室を出て営業部に戻る途中。
 部長の麗人はポツリポツリと、話し始めた。

「新入社員の名簿を見て、伊集院さんの名前を見た時は驚きました。大学を卒業して、もう会えないのだと思っていたので。まさか、我が社に入社してくるとは思っていなかったので。てっきり、伊集院さんは家の家業を継いでいるのかと思っていました」
「弁護士にはなりました。でも、父にちょっと反抗して別の仕事につこうと思って…」

「お父さんに反抗ですか? 何かあったのですか? 」
「母が早くに亡くなり、父は本当は再婚したいようで…。でも、私がいるから再婚したくても我慢しているとそう思い込んでしまったのです。それも誤解だったようですが」

「そうだったのですね。先日、伊集院さんのお父さんにお会いした時に自分が感じたのは。伊集院さんの事を、とっても愛しているんだって感じました。思い込んでしまったのは、きっと何かがあったのだと思いますが。本心は、お父さんに直接聞いてみるのが一番だと思います」
「そうですね…。父は、今でも母を愛していると話していました」

「それなら何も心配する事は無いと思います。伊集院さんも、自分に正直になって下さい」
「はい、そうします。有難うございます」

 なんだか自分で自分を励ましているような気がするけど…。

 

 営業部に戻って来た麗人と部長の麗人。

 それぞれ席に戻って仕事を始めた。



 11時を回る頃。
 彩が外回りから戻って来た。

 お昼をコンビニで買って来た彩は、袋をもって部長の麗人の元へ歩み寄って来た。

「部長、お昼一緒にいかがですか? 部長の分も買ってきましたよ」
「いいえ、今日は持って来ていますから結構です」
「そうなんですか? じゃあ、一緒に食べません? 」

 フッと一息ついて部長の麗人は彩を見た。

 彩は部長の麗人の素顔を見ると、ハッとして茫然となった。

 嘘…この人こんなに綺麗な顔をしていたの?
 知らなかった…。

 彩が見惚れていると、部長の麗人はキッと厳しい目で彩を見た。
< 66 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop