逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
「朝丘さん、優衣里ったら仕事のしすぎで疲れているのよ。あまり気にしなくて、良いと思うわ。ねっ、優衣里」
ぶりっ子な笑顔を向けて来たのは、文彦の隣に座っているあの萩野彩。
まるでメンヘラのような服装で、メイクも相変わらず派手な彩に笑いかけられると気持ち悪い。
今、僕に向かって「優衣里」って呼んだ?
「伊集院さん? 早く社長室に届けてもらえますか? 」
再び部長の麗人に言われて、仕方なくファイルを手にした立ち上がった麗人。
そのまま営業部を出て社長室へ向かう事にした。
僕の意思で動いている。
ふとファイルを持った手を見ると、細くてしなやかな綺麗な手が目に入った。
この手は優衣里さんの手だ。
綺麗な優衣里さんの手を見るたびに、この手を絶対に荒れさせるような事はさせないって思っていたんだよな。
そのまま窓の外を見た麗人。
「え???????? 」
窓ガラスに映った自分を見た麗人は、驚いて固まってしまった。
ガラスに映った自分の姿は…優衣里だった。
大きな眼鏡をかけて落ち着いた色のジャケットを着て、長い髪を一つ結びで結って堅物そうな表情をしている。
どうなっているんだ?
歩道橋から飛び降りたのに、なんで優衣里さんになっているんだ?
ピピッ。
携帯電話が鳴りポケットからヴァイブ音の振動が伝わってきた。
麗人はおそるおそる携帯電話を取り出した。
すると画面表示には「文彦」と表示されていたが、日付を見て驚いた。
日付は6ヶ月前の日付で、その日は麗人がある秘密を知ってしまった時だった。
「マジかよ…。僕が、彼女の人生事を護るって言ったからか? 」
信じられない気持ちでいっぱいだったが、麗人はこれは最大のチャンスだと思った。
文彦と優衣里の結婚は、初めから曰くつきだった。
派手に女遊びをしている文彦が、急に地味な優衣里に接近して行った。
優衣里は伊集院財閥の娘。
伊集院財閥は、世界的大手の法曹界事務所を経営している弁護士一族。
腕利きの国際弁護士が多く、中には弁護士ではなく検察官になった者や医師への道を目指した者もいる。
現在の党首である伊集院優造(いじゅういん・ゆうぞう)は、国際弁護士として日本とアメリカを行き来している。
代々からの財産や資産が多く、お屋敷のような家に住んでいる優衣里。
しかし、何故か優衣里は誰とも交際しておらず縁談の話も断り続けていた。
そんな優衣里が文彦と付き合い始めたことが、麗人は疑問だった。