逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~

 その頃。
 麗人はあのカフェに来ていた。

 今日はあまり空腹ではなく軽くサンドウィッチのセットと、ホット珈琲を頼んでゆっくり食べていた。

「姉ちゃん、今日も来てくれてありがとうな。これ、サービスだ」

 そう言ってマスターが持って来たのは、手作りのプリンだった。
 生クリームが乗ってサクランボが乗せてあるのを見ると、麗人は鷹人とよく来ていた頃、同じようにマスターがサービスでプリンをよくくれていた事を思い出した。
 
 子供ではないのに何でプリンをくれるのかと、不思議な気持ちもあったが、麗人は小さい頃に駅近くのショッピングモールに麗香と妹の麗美と一緒に買い物に来て、おやつの時間になるとショッピングモールのフードコートでデザートのプリンを食べさせてもらってた事を思い出していた。
 そのプリンの味と同じ味のプリンを食べると、何となくほっとできたのだ。

 今でも変わらないままの味であるプリン。
 
 カラン。
 鈴の音が鳴り、入って来たのは部長の麗人。

 奥の席で一人で食べている麗人(優衣里)の姿を見つけると、そのまま歩み寄って行った。


「伊集院さん」

 声をかけられ、驚いて振り向いた麗人。

「部長? どうされたのですか? 」

 ここのカフェに休憩時間に来る事って、なかったと思うけど。
 でも、過去のの出来事が変われば行動も変わるからなぁ…。

 驚いている麗人に、部長の麗人はそっと微笑んだ。

「同席してもいいですか? 」
「はい、どうぞ」

 部長の麗人が向かい側に座ると、マスターがお水を持ってきた。

「ホット珈琲をお願いします」
「はい、お待ちください」

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