逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
麗人はちょっとドキドキしていた。
このお店は知っているのは当然だけど、このタイミングでくるなんて予想外だから。
でも、積極的になってって優衣里さんがいっていたから…。
「伊集院さん、ここのカフェ良く知っていましたね。場所的に、通りからは外れていて、お昼休みに利用する人も少ない場所ですが」
「混んでいる場祖が苦手なので、ちょっと奥に入ってきたら偶然見つけました。量もそれほど多くなくて、ちょうどいいので気に入ったのです」
「そうでしたか」
「おまたせしました」
マスターが珈琲を持ってきた。
そして…
部長の麗人の前に、麗人にサービスとして持って来た同じプリンを置いた。
「兄ちゃん、どっかで見た事あるって思ったが。良く、お父さんと一緒に来てくれていたよな? 」
「は、はい。覚えてくれていたのですか? 」
「なんとなくな、お父さんの事はよく見ていたからはっきり覚えていたんだ。久しぶりに見ると、兄ちゃんお父さんと似て来たな」
「そうですか? 」
「ああ、目元なんてそっくりだ。彼女も、とっても美人で羨ましいなぁ。これ、兄ちゃんにもサービズだ。遠慮なくどうぞ」
「有難うございます」
今…彼女って言われたけど…。
麗人は部長の麗人の顔をちらっと見た。
部長の麗人は珈琲を飲み始めた。
「ここは、よく父と一緒に来ていたカフェです。もう何年も来ていませんでした。珈琲の味が変わらないままで、なんだか嬉しいです」
言いながらそっと、部長の麗人が見つめてきて、麗人はドキッとなった。
自分に見つめられているのにすげぇドキッとした…。
「伊集院さん。前に、僕の家に遊びに来て下さいと話しましたよね? 」
「はい」
「今度の日曜日に、遊びに来てくれませんか? 」
「日曜日ですか? 特に予定はないので、行けますよ」
「じゃあ、日曜日の午後に迎えにいきます」
「わかりました」
ちょっと照れたように視線を落とした部長の麗人。
こんなふうに初めから素直になっていたら、優衣里さんはあんな悲惨な結婚をしなくてすんだのかな?
麗人は何となく胸がキュンとなった。