逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
 
 営業部内で和解の空気が漂う中、文彦と彩は帰社してそのまま2人でホテルへとやって来た。

「文彦さん、今日はピークなの。協力してくれるわよね? 」
 下着姿になった彩が文彦の首に腕を回し顔を近づけて来た。
 文彦はシャワーを済ませてバスローブ姿で、やる気満々だ。
「別に構わないけど、調べられたら俺の子供だってバレちゃうぜ」
「大丈夫よ。そうなる前に、例の場所に入れちゃうから」
「マジかよ。あの場所、そろそろいっぱいじゃないのか? 」
「そっか。あの場所がいっぱいになったら、まだ他の場所もあるから大丈夫よ。なんなら、文彦さんの家だってあるじゃない」
「まぁな。もうすぎ親父とおふくろも、そろそろくたばりそうだし。もう入れる場所は決めてあるけどな」

 フフっと笑い合う文彦と彩。

 そのまま濃厚なキスを繰り返し、ベッドに倒れこむと激しく絡み合いお互いを求めあってゆく…。
 薄暗い灯りの元、窓から差し込んでくる月の光に照らされる2人のシルエットは、まるで悪魔が絡み合っているかのようにも見える。
 お互いが求め合う姿は、共食いでもしているかのように醜く見え、感じ合う姿は獣が喘ぎ声をあげているかのようだ。

「文彦さん…もっと…もっと動いて…」
「彩…もっと締めていいぜ…」
「締め付けて…離さないから…」

 まるで獣が獲物にかぶりつくかのような光景は、見ていても美しくない。
 ただの欲望の渦の様だ。

「彩…いきそう…」
「いいわよ、いっても…沢山…出して…」

 頂点を感じた2人の声が獣の遠吠えのように聞こえる。
 

 彩はこれで妊娠して沙原コンサルティングから、たっぷり慰謝料請求してやれると思った。
 文彦は優衣里から婚約破棄の件で慰謝料請求して、不当な移動命令を出した沙原コンサルティングからも慰謝料請求してやろうと企んでいた。



「もしもし? …お前、金欲しいって言っていたよな? 」
 行為が終わった文彦は、ベッドで眠っている彩をよそに電話をかけ始めた。
「ちょっとお金儲けしないか? …今から情報を送るから、そいつをヤッてくれ。…そうだな、とりあえず先払いで100万でどうだ? 成功したら、逃亡費も兼ねて上乗せして後300万払う。…ああ、大丈夫だ。相手は坊ちゃん育ちだから簡単にやれるぞ。…ああ、頼む」

 電話を切りニヤッと笑った文彦は、相手にメールを送った。
 その内容は
(ターゲット、沙原麗人。沙原コンサルティング社長の息子)
 と書いて、部長の麗人の写真を添付した。

「…これで邪魔者はいなくなる。…婚約破棄したって、優衣里は俺のもんだ…」

 ニヤッと狂ったような笑みを浮かべた文彦は、まるで悪魔にでもとりつかれたような目をしていた。

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