逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
ナイフで切りかかっても、拳で殴りかかっても、かすりもしない事で男達は息が上がって来た。
「あれ? 麗人さんじゃないっすか」
声がして振り向くと、シャキッとした黒服にきりっとした鋭い目をした背の高い男が、ガタイのいいイカツイ顔にサングラスをかけた2人の男を連れて現れた。
「どうしたんですか? 」
黒服の男が部長の麗人に歩み寄って来た。
「久しぶりだね、元気? 」
まるで昔からの友達のように、部長の麗人が挨拶をした。
「おかげさまで、麗人さんのおかげで商売繁盛っすよ」
「それは良かった」
ん? と、男達を見た黒服の男。
「お、おい…ちょっとやばくないか? 」
「あの人って、ここら辺を仕切っている組の人だぜ」
「なんで、あいつと親しいんだ? 」
コソコソと話している男達に、黒服の男は威圧的な目を向けて歩み寄って行った。
「テメー等、まさか麗人さんに何かしたんじゃねぇだろうな? 」
くッと睨まれると、男達は恐怖に引きつった顔を浮かべた。
「い、いいえ」
「何もしていません」
「ただ、道を聞いていただけです」
はぁ? と目を座らせた黒服の男。
「テメー等。麗人さんに手ぇだしたら、全員海の底に沈めるぞこらぁ! 」
完全にビビってしまった男達。
バタバタ…駆け寄って来る足音が近づいて来た。
足音と共に現れたのは複数の警察官だった。
「お前達か? 市民にナイフを振り回していると言うのは! 」
警察官が男達を取り押さえた。
「ちょっと、なにもしてませんて」
「話していただけだよ! 」
「道聞いていただけだし」
言い訳をしている男達を、部長の麗人は呆れて見ていた。
「何が道を聞いていただけよ! 」
警察官の間から一人の女性が現れた。
サラッとしたショートヘヤーに、綺麗な切れ長の目が魅力的な女性は、どこか部長の麗人に似ている感じがする。
落ち着いた黒いスーツ姿に、ちょっとがっしりしている女性は、ナイフを持っている男に近づいた。
「あんたの手に握られているもの、それなに? 」
グイッと、イカツイ男の手をひねり上げた女性。
「痛ってぇ! 何するんだよ! 」
「傷害未遂で逮捕するわ! 」
女性は内ポケットから手錠を取り出して、男に手錠をかけた。