逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
足音が近づいて来て、鷹人と麗香が入ってきた。
「社長! 」
わざとらしい泣きそうな顔をして、彩は鷹人に駆け寄って行った。
「これを見て下さい! 突然、部長が私に襲い掛かって来たのです! 」
下着姿の彩を見て、鷹人は特に慌てる事もなく冷静な顔のまま部長の麗人を見た。
鷹人の後から戻って来た麗人は、彩の姿を見て驚いた。
しかし、なんだかわざとらしくて半面呆れてしまった。
「部長、どうゆう事なのか説明してくれるか? 」
鷹人が尋ねると、部長の麗人はフット一息ついた。
「自分は何もしていません。萩野さんが、話があると言ってやってきたのですが。突然、自分で服を引き裂いて騒ぎ出したのです」
「嘘! 用があるから来てと言って、呼びつけたのは部長です! 」
「自分は萩野さんを呼んだりしていません。萩野さんの方から、やって来たのです」
「どうしてそんな嘘をつくのですか? 部長。前から言っていたじゃないですか! 私にお金を出すから、一晩付き合えって」
どこをどうしたら、そんな話が出てくるのやら…。
部長の麗人は呆れて言い返す気力さえ失いそうになった。
「とりあえず、萩野さん上着はある? 」
麗香が尋ねると、彩は泣きそうな目をして首を振った。
「じゃあ、ちょっとこれを貸すから。今日はこのまま、帰った方がいいわ」
麗香は自分が来ていたジャケットを、彩に羽織らせた。
「私、派遣なので帰ってしまうとお給料が減ってしまいます」
「でも、仕事ができる状態ではないでしょう? 貴女が言うように、そんな怖い思いをしたなら尚更じゃない? 」
「ですが…」
麗人はそっと自分の席に戻った。
なんだ? この展開は。
こんなことは、前は起こらなかったけど、僕が婚約破棄を決めたから過去のなかった事が起こっているのか?
「このまま死後尾を続ける事は、できないと思うから。申し訳ないが、今日は退社してもらいたい。お給料の事なら、派遣会社に話しておくから心配しなくていい」
「分かりました…」
渋々承諾した彩は、帰り支度をしてそのまま帰って行った。