逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
「…何を言われても、朝丘さんを信じる事はありません。…婚約破棄は、正式に申し立てます。慰謝料を請求したいなら、そうして頂いて構いません。父も、同じ意見です」
「そうか、お前は俺のへの気持ちはもうないと言うのか? 」
「はい…。貴方には、交際中でも何一つしてもらっておりません。食事をしても、いつも私が支払っていましたし。いつも、どこへ行くにも我が家の運転手が連れて行く事ばかりでしたので…。このまま結婚しても、幸せにはなれないと判断しました」
「なんだよそれ、俺が一方的に悪い言い方しやがるんだな? 」
言いながら文彦が麗人に近づいてきた。
「俺は、お前が可哀そうだと思ったんだよ。暗い顔してるし、誰も相手にしないような女だったからな。俺が相手してやらないと、誰も相手にしてくれないだろう? だから、俺が付き合って結婚してやろうって。そう思ったんだよ。分かるか? こんなに情のつい男が、どこにいると言うんだ? 俺の両親んだって、大賛成してくれているじゃないか。お前、俺と別れたらきっと誰も相手にしてくれないぜ。部長に寝返っても、あのざまだ。お前もすぐに捨てられるだけだぞ! 」
言いたいこと言いやがって、お前と一緒にするな!
麗人は怒りが込みあがるよりも、呆れた気持ちが込みあがって来た。
「もういい加減にしてもらえませんか? 」
仕事を終わらせた麗人は、帰り支度を始めた。
気づけば定時時刻を過ぎていた。
「朝丘さんが何を言おうと、婚約は破棄します。その後、私がどうしようと朝丘さんには関係はい事です。後は、法廷で話しましょう。朝丘さんが慰謝料請求をされるなら、それで結構です。その慰謝料が正当なものなのかどうかを、しっかりと法の下で見極めてもらうのが一番良いと思われますので」
なんだ? この強さは…。
以前の優衣里からは想像できない! いつも、何を言っても逆らう事はなく言いなりになっていたのに。
やはり…部長のせいなのか?
「お先に失礼します」
挨拶をして麗人はそのまま帰って行った。
「ちょっと待て! 」
帰って行麗人を文彦は追いかけて行った。
「優衣里! ちょっと待て! 」
帰って行く麗人の手を握って引き止めた文彦。
「離して下さい! 」
振り払おうとする麗人の手を、意地でも話さないと言わないばかりに強く握りしめた文彦。
「頼む! 考え直してくれ! 俺が間違っていたから」
なんだ? 今度は泣き落としでもするつもりか?
じっと身構えて見ている麗人に、文彦はちょっと怯んだ目を浮かべた。