逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
「…彩に騙されていたよ。…金に目がくらんだのも認める。…父さんの事業は赤字だ。それでも、母さんは派手な暮らしをやめない。俺は、株に手を出して儲けたが暴落した株があり多額の借金を背負っているのも事実だ。だから、お前の家の金を目当てにしようと思った、それは認める。だけど…」
急に真剣な目をして文彦は麗人を見つめてきた…。
「今のお前を見ていると、うまく言えないが…今までとは何か違う気持ちが込みあがって来て、胸が苦しくなるのは本当だ…。正直、お前がこんなに綺麗だったなんて今まで気づかなかった事が情けなく思っているんだ…」
言っている事は半分本音もあるだろうが、半分は嘘だ。
あわよくば全部萩野さんにかぶせて、自分は逃れようと思っているだろう。
お金に苦しくて欲望に駆られているのは事実だろう…だが、お前と結婚なんてしたら、優衣里さんは不幸になるばかりかお前の欲望で殺されてしまうだけだ!
この握られている手からも、とても冷たい感覚した伝わってこない。
それに、この男の目はどこか以上で萩野さんと似ているから信頼はできない。
「自分の間違いに気づいた、そう言いたいのですか? 」
「ああ、そうだ。だから…」
「それでも、気持ちは変わりません。間違いに気づいたのなら、自分自身が今一番何をするべきなのかを考えて下さい」
「考えた! だからこうして、言っている」
「いいえ。朝丘さんがやるべき事は、私とよりを戻す事ではありません! 本当に大切な人を、助ける事だと私は思います」
はぁ?
茫然となった文彦の手の力が緩んだ。
その隙に麗人は手を振り払った。
「もう一度言います。私は、朝丘さんと結婚はしません。そして、よりを戻す気もありません。この先もずっと、永久にありません」
それだけ言うと、麗人は背を向けて去って行った。
茫然と佇んだまま、文彦は暫く何も考えられなかった。