あるホラーな再恋噺
44年目の同窓会③


午後2時ちょうど…。
定刻時間となると、さっそくセレモニーは幕を切った。
男女二人の司会がマイクを握り、式次第に従って進行をスタートさせた。


しかし、その後も、急ぎ足で会場に到着する同窓生たちは後を絶たなかった。
司会者はその都度、”ただいま○○分遅れて遅刻者、元3年○○組の○○さんが到着しました~。みなさーん、歓迎の拍手をどうぞ❕”といったコメントを浴びせての歓迎だ。
皆は拍手しながら、暖かいヤジを飛ばして出迎えた。


このブラックユーモア・テイストの”遅刻者”へのエールも、本同窓会恒例の趣向だったようだ。
実際、”遅刻者”が到着するたび、会場内はどよめいて、何とも和やかな空気を醸していた。



結局、セレモニーが開会されて10分もしないうちに、この手荒い(❓)ウェルカムを受けて会場入りした遅刻者は8人に及んだ。
そして、2時20分ジャストのことだった。


一人の女性が遠慮がちに後部の入り口ドアから入ってきた。
しかし、目ざとい司会者のペアはその”遅刻者”を見逃さなかった。
すかさず、絶妙のアドリブでその20分遅れの遅刻者に洗礼コメントを投げつけた。


***


「皆さん!ただいま、20分遅れの遅刻参列者到着です❢ええと…、元3年4組の旧姓水原ユキノさんですねー。さあ、元学級委員長歴任者の遅刻女子に盛大な拍手をお願いしま~す❣」


”キターー!!”


思わずノブオは心の中で叫んだ。
そして、思いっきり両手を叩き、大きな拍手を待ち兼ねた彼女に送った。


”なんと、4人全員揃ったか…(^^♪。よし…❕こうとなったら、彼女たちとは全員、再会して話しをするぞ❕オレにとってはずっと特別な存在だった、同級生の元ギャル4人とは”決着”しないと…”


すでにほろ酔いを通り越し、かなりの酔いに支配されていたノブオは、ルンルン気分&悲壮な覚悟という微妙なヘンテコモードを以って、4人へ交互に視線を行き来させるのだった…。

***


式次第はトントンと進行し、2時半過ぎには歓談タイムに入った。
ここで各自、ポジションの大移動が始まり、会場内は一気にざわめく。


この時点でノブオは、同じテーブルを囲む男連中とはひと通り44年ぶりに再会儀式を済ませており、その胸の内は元ギャルとのスキンシップ、それオンリーとなっていた。


3時前には、早くもノブオのテーブルには女性陣が入れ代わり立ち代わり、”訪問”してきた。
とりわけノブオは44年目にして”初参加”したという”新鮮味?”もあったろうが、元同級生の異性はしきりに接近してきたのだ。


”さあー、特別4人組と接触する前に、ウォーミングアップと行くか。でも…、みんな、何と色っぽいんだ!所詮、60間近の姥桜だが、昔のキャピキャピぶりが目に刻まれてるせいか、えらくソソる”


彼は現実にオバサン軍団に囲まれ、キュンと胸をを熱くしていた。


***


もはや、ハイテンションマックスのノブオは、数人の女子相手に、もうマシンガントークで昔ネタをガンガンかまして笑いが絶えさせなかった。
で…、中原ノブオは、明日死ぬ予定の人生脱落者とは思えないようなノリノリぶりを披露していた。


だが、この辺りで彼的には、そろそろ…、というモードに入っていた。
ここまで来たら、お目当て4人との44年を経た遭遇しかなかった訳で‥。
そして‥、程なくすると、彼は一瞬のフラッシュ感、トリップ感に襲われる…。



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