あるホラーな再恋噺
○○ホテルにて②
そうであった…。
また…、だったのだ。
あのテーブルの一角だけ別…。
それ同様、ここの神社でその空間を隆起させている…。
漠然とながら、ノボルにはそんな仮説という確信が持てた。
”であれば…、彼女たちとのこれからの時間もまやかしか…”
ノボルには、割と冷静に”これからのこと”が予感できた。
だが、この時点での彼にはそのまやかしにもすがる思いを放棄できなかった。
女々しいことは百も承知で…。
***
「中原くーん💛」
とてもトウがたった女性とは思えない、空気を鋭利に突き刺すような音感…、それがノボルの耳に届いた。
言うまでもなく、声の主は”あの子”たちである。
”やっぱりか…”
彼の判断基準は、その声がこの神社の上から放たれたことであった。
「早く上がってきなよ、中原くーん!」
彼は神社下から、コケに覆われた長い石段を見上げた。
神社上には、暗がりながら、明らか彼女たちが笑顔で手を振っている。
ノボルは酔いで視点がおぼつかないながらも、目を凝らした。
”進藤さん、康子ちゃん…、それに古澤…”
”さっき”の3人はいた。
問題は水原ユキノであったが…。
”…いた!…3人とちょっと離れて杉の木の陰で、彼女も手を振って笑ってる”
ノボルの心は再びときめいた。
まやかし結構❕…ここがこの世でもあの世でもそれ以外でも、彼女たちと最期を過ごす。
4者4様に、心から感謝と別れをもう一度…。
ここに至って、中原ノブオに怖いものはなかった。
そして、それは…、与えられることよりも、むしろ捧げたい気持ちに占領されていた。
他ならぬ、この4人の同窓生には…。
***
彼は暗がりの中、全力でコケに覆われた蹴上げの高い石段を駈け上がって行った。
ひたすら彼女たちを目指して…。
「早くー!早く登っておいでよー♡」
まるで穢れなき天使のような、60歳目前のおばさん4人の黄色い声のエール…。
石段を疾走するノボルは、神聖な場所だと承知で彼女たちの笑顔とエールの声にコーフンしていた。
どのくらいの時間、何段を登っただろう。
その感覚を置き去りに、彼女たちの元にゴールした時、ノボルはしっかり4人を確かめた。
”みんないるぞー💖笑顔で…。まやかしでもステキだ。本物以上だって!みんな、頼む…”
「さあ、中原くん、行こう❣」
音頭を取ったのは古澤ユカだった。
そして、行き先を指さしたのは、さらに急傾斜で続く石段だった。
その先はどこまでも続いてるようだった。
まるで天上まで…。
***
”なんということだ…。神社の境内のさらに上の石段か…”
気が付くと5人は”それ”を上っていた。
周りは漆黒の闇であったが、皆、楽しげに笑い声を上げながら、まるでハイキングのノリであった。
ノボルは4人みんなと、とりとめのない会話に興じながら、自らも時折心の底から笑った。
時間が時間を呑み込む空間気流…。
それなりの時間と距離を経て、ノボルの視界には普通の都会の雑踏が広がっていた。
「あそこだよね、水原さん…」(ユカ)
「うん…」(ユキノ)
「中原くん、着いたみたいよ。あそこらしいから…」(史子)
「さあ、行くよ!中原くん♥」(康子)
史子とユカは先頭を切って、”あそこ”に向かって走っている。
ユキノも背の高い二人を追って、笑顔でその後から駆けていった。
ノブオは康子に腕を引っ張られ、それに続いた。
”着いた…。でも、ここって…???”
ずいぶん走った気がするが、皆、息は全く上がっていなかった。
辿り着いたそこ…、それは一目瞭然だった。
”ラブホテルか…!”
そうであった…。
また…、だったのだ。
あのテーブルの一角だけ別…。
それ同様、ここの神社でその空間を隆起させている…。
漠然とながら、ノボルにはそんな仮説という確信が持てた。
”であれば…、彼女たちとのこれからの時間もまやかしか…”
ノボルには、割と冷静に”これからのこと”が予感できた。
だが、この時点での彼にはそのまやかしにもすがる思いを放棄できなかった。
女々しいことは百も承知で…。
***
「中原くーん💛」
とてもトウがたった女性とは思えない、空気を鋭利に突き刺すような音感…、それがノボルの耳に届いた。
言うまでもなく、声の主は”あの子”たちである。
”やっぱりか…”
彼の判断基準は、その声がこの神社の上から放たれたことであった。
「早く上がってきなよ、中原くーん!」
彼は神社下から、コケに覆われた長い石段を見上げた。
神社上には、暗がりながら、明らか彼女たちが笑顔で手を振っている。
ノボルは酔いで視点がおぼつかないながらも、目を凝らした。
”進藤さん、康子ちゃん…、それに古澤…”
”さっき”の3人はいた。
問題は水原ユキノであったが…。
”…いた!…3人とちょっと離れて杉の木の陰で、彼女も手を振って笑ってる”
ノボルの心は再びときめいた。
まやかし結構❕…ここがこの世でもあの世でもそれ以外でも、彼女たちと最期を過ごす。
4者4様に、心から感謝と別れをもう一度…。
ここに至って、中原ノブオに怖いものはなかった。
そして、それは…、与えられることよりも、むしろ捧げたい気持ちに占領されていた。
他ならぬ、この4人の同窓生には…。
***
彼は暗がりの中、全力でコケに覆われた蹴上げの高い石段を駈け上がって行った。
ひたすら彼女たちを目指して…。
「早くー!早く登っておいでよー♡」
まるで穢れなき天使のような、60歳目前のおばさん4人の黄色い声のエール…。
石段を疾走するノボルは、神聖な場所だと承知で彼女たちの笑顔とエールの声にコーフンしていた。
どのくらいの時間、何段を登っただろう。
その感覚を置き去りに、彼女たちの元にゴールした時、ノボルはしっかり4人を確かめた。
”みんないるぞー💖笑顔で…。まやかしでもステキだ。本物以上だって!みんな、頼む…”
「さあ、中原くん、行こう❣」
音頭を取ったのは古澤ユカだった。
そして、行き先を指さしたのは、さらに急傾斜で続く石段だった。
その先はどこまでも続いてるようだった。
まるで天上まで…。
***
”なんということだ…。神社の境内のさらに上の石段か…”
気が付くと5人は”それ”を上っていた。
周りは漆黒の闇であったが、皆、楽しげに笑い声を上げながら、まるでハイキングのノリであった。
ノボルは4人みんなと、とりとめのない会話に興じながら、自らも時折心の底から笑った。
時間が時間を呑み込む空間気流…。
それなりの時間と距離を経て、ノボルの視界には普通の都会の雑踏が広がっていた。
「あそこだよね、水原さん…」(ユカ)
「うん…」(ユキノ)
「中原くん、着いたみたいよ。あそこらしいから…」(史子)
「さあ、行くよ!中原くん♥」(康子)
史子とユカは先頭を切って、”あそこ”に向かって走っている。
ユキノも背の高い二人を追って、笑顔でその後から駆けていった。
ノブオは康子に腕を引っ張られ、それに続いた。
”着いた…。でも、ここって…???”
ずいぶん走った気がするが、皆、息は全く上がっていなかった。
辿り着いたそこ…、それは一目瞭然だった。
”ラブホテルか…!”