風と共に去らなかった夫になぜか溺愛されています
 このハチリアとシチノルの争いを長期化させたのは、二つの国の間にあるハチリア王国のブレア領である。国境にある辺境の領地。このブレア伯がシチノル側に寝返ったからだ。
 それに巻き込まれて、バセクが大怪我を負ってしまい、その消息を絶ったことから亡くなったという話になる。
 だが、実は大怪我をしながらもなんとか逃げ延びたバセクは、山の奥の老夫婦の世話になってなんとか生きていた。マリッセと再会した後、この老夫婦に礼をするシーンにも、グロリアの中の人は号泣した。

 ということは、だ。
 十歳のグロリアは考えた。このブレア伯がシチノル側に寝返らない方法をとればいいのではないか、と。
 実はこのグロリアにはこのブレア伯との縁談がきていたはずなのだが、マリッセをいじめ倒すくらいのグロリアであるから、もちろんそれを断った。断れない縁談であったはずなのに、断ってしまったことから、グロリアの性格というものがよくわかる。
 だが今、自分はグロリアであってグロリアではない。このブレア伯に嫁ぎ、ブレア伯をハチリア側に引き留めておけば、兄とマリッセは最初から幸せな結婚生活を送ることができる、はず。

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