秘密恋愛短編集
相手は私を気にすることなく教室へ入ってきて、そのまま横を通り過ぎようとしている。


私も早く教室を出よう。


そう思ったときだった。


不意に手首を掴まれてビクリと体が震えた。


誰!?


そう思って顔を上げると同時に「どうして俺から逃げるんだ?」と質問されていた。


英祐!!


どうしてここに!?


英祐から逃げてここまでやってきたのに、探しに来てくれたみたいだ。


「べ、別に、深い意味はないから」


そう言ってそっぽを向いたけれど英祐は手首を離してくれない。


「泣いてたのか?」


顔を覗き込んでそう聞かれて、返事に詰まった。


英祐のことを考えていたら自然と涙が出てきてしまったなんて、絶対に言えない。


「コ、コンタクトがズレて痛かっただけ」
< 103 / 121 >

この作品をシェア

pagetop