秘密恋愛短編集
英祐がいつも使っている爽やかで少し甘い香水の香りが鼻をくすぐる。


好きという感情が一気にせり上がってきて我慢できなくなってしまう。


目にジワリと涙が溜まって今にもその感情を英祐にぶつけてしまいそうになる。


でもその瞬間、貴美子の顔を思い出していた。


顔を真赤にして英祐のことを好きになったと告白してくれた。


私にとって貴美子は大切な親友だ。


そんな貴美子にこんな場面を見られたらどうなるだろう?


そう考えただけで胸は締め付けられて、同時に背筋は寒くなった。


友情をなくしたくない……。


私は唇をかみしめて英祐の体をそっと押し離した。


英祐、今どんな顔をしてるだろう?


どうして私のことを抱きしめたりしたんだろう?
< 105 / 121 >

この作品をシェア

pagetop