秘密恋愛短編集
☆☆☆

「こうしてるとなんだか合宿みたいで楽しいね」


その日の放課後、約束通り私のクラスの女子生徒たちは全員で残ってクッキー作りをしていた。


みんなでワイワイ騒ぎながらの作業は確かに楽しい。


だけど私は未だに上の空だった。


この中にどれだけの人数が本気で英祐のことを好きになっていたんだろう。


その子たちはもう英祐に会うことができなくなってしまうんだ。


そう考えると胸の奥がチクリと痛む。


「桃子、ぼーっとしてどうしたの?」


ボールを持ったまま棒立ちになっていた私に貴美子が不思議そうな表情で声をかけてきた。


「あ、ううん、なんでもない」


そう答えて慌てて作業を再開する。


「みんな張り切ってるよねぇ。先生のラストだから」


「そうだね。貴美子も玉垣先生のことが好きなんだよね?」


「うん、大好き!」
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