秘密恋愛短編集
☆☆☆

みんなで作ったクッキーは最高のできだった。


甘さひかえめで、これなら英祐も難なく食べられそうだ。


中にはたくさん作ったから彼氏にプレゼントするという子たちもいて、内心ホッとしてしまった。


そして、また朝が来る。


今日は英祐の実習が終わる日だ。


放課後には教室でお別れ会をする予定にもなっている。


「英祐とは、もう学校で会えなくなっちゃうのかぁ」


制服に着替えながら思わずポツリと呟いた。


なんだか心にポッカリと穴が空いてしまったような気分だ。


ただ日常に戻るだけなのに、変なの私。


のろのろと着替えをして朝食を取り、外へ出る。


そのタイミングで隣の玄関が開いて英祐のおばちゃんが出てきた。


右手にはいつものようにお弁当箱を持っている。


それを見た瞬間、私は微笑んでおばちゃんに駆け寄っていた。


今日で最後だ。


今日くらいはちゃんと届けてあげよう。
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