秘密恋愛短編集
☆☆☆

それからの一週間はあっという間に過ぎていった。


両親の結婚が決まり、私の名字が及川になったかと思えば、賢人さんと聡がこっちの家に引っ越してきたのだ。


「俺たちはアパート暮らしで部屋数がないんだ。ごめんな」


聡は申し訳なさそうにそう言ってきたけれど、問題はそこじゃなかった。


どっちの家で暮らすにしても、聡とひとつ屋根の下で生活するってことじゃん!


そんな当然のことをふたりが引っ越してくることで改めて実感することになった。


業者がバタバタと家の中を出入りして、数時間後にはすっかり荷物が片付いていた。


「すごい……」


なにがすごいのかわからないけれど、片付いた荷物を見て思わずそうつぶやく。


まるで最初から4人家族だったような家の雰囲気になっている。


及川父子の持ってきた家具はどれもシンプルで使い勝手がよくて、無駄なものが少ない。


そのためどんな家でも似合ってしまうんだろう。


「それじゃ、引っ越し完了祝ということで!」


夜になり、リビングは豪華な料理が並んでいた。


母親と私が作ったものも、デリバリーで注文したものもある。
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