秘密恋愛短編集
☆☆☆

朝食の味は正直よくわからなかった。


目の前に大好きな聡がいて、緊張して味わうことができなかったのだ。


聡は終始「うまいうまい」と連呼してくれて、朝からご飯をおかわりまでしてくれた。


そこまで美味しいと言ってもらえるとさすがに嬉しくなってしまって、張り切ってお弁当まで作ってきてしまった。


そういえば聡はいつでもコンビニの袋を持って学校に来ていたなぁと思い出す。


父親の仕事も忙しそうだし、母親がいないと家の中は寒々しくなってしまうのかもしれない。


それでもここまで真っ直ぐ、明るく育った聡を見ていると、賢人さんの育て方の良さを感じられる。


「おはよーっ」


A組の教室へ入ると同時に友人の京香が声をかけてきた。


しかし一緒に登校してきた私と聡を交互に見つめると唖然とした顔になり、なにを勘違いしたのか盛大に後ずさりをしてしまった。


「ちょ、ちょっと京香、変な勘違いしないでよ?」
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