秘密恋愛短編集
「宿題中?」


そう聞く聡の右手には今日出されたプリントと筆記用具がある。


「う、うん、一応ね……」


と言ってもさっきから全然進んでいなくて、プリントはまっさらだ。


「俺も宿題しようと思ってたんだけど、今日のプリント難しくねぇ?」


聡が眉を下げて困った様子で言ってきた。


「え、うん。そうかな? そうかも?」


私の場合はちゃんと問題が頭に入っていないことが原因だけれど、とにかく頷いた。


「一緒にやらない?」


聞いてきた聡はすでに部屋の真ん中に置いてある丸テーブルの前に座り、プリントを広げていた。


ちょっと覗き込んでみると、聡のプリントも真っ白だ。


それを見て安心した私は机からテーブルに移動することにした。
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