秘密恋愛短編集
☆☆☆

さっきのは一体なんだったんだろう。


何度思い返してみても聡は私にキスをするところだった。


キス……。


近づいてきた聡の顔。


耳に息がかかるくらいに近かった。


またカッと顔が熱くなって、それを紛らわせるためにカレーの鍋をかき混ぜる。


今日の晩ごはんは甘口カレーだ。


聡の好みがわからないから、後から入れれるスパイスの粉も購入してきた。


隠し味はスプーンいっぱいのコーヒーの粉。


普段私はコーヒーが飲めないのだけれど、カレーに入っている隠し味程度なら食べることができる。


「理恵」


「は、はい!?」


驚いて振り返ると腕まくりをした聡が立っていた。


「俺風呂掃除してくるよ」


「え、い、いいの?」
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