秘密恋愛短編集

キス

ふたりでカレーを食べて、ふたりで洗い物をして、リビングでのんびりとテレビを見ていた。


聡は歌番組が好きみたいで今日の放送がはじまったらすぐに画面にかじりついてしまった。


時折口ずさむ声が聞こえてきて、それは賢人さんの声にそっくりで、あぁ、親子なんだなぁと感じる。


そしてやっぱり思っていたとおり歌は上手だった。


この事実を知ったら女子たちはまた狂喜乱舞しそうだ。


そんなことを考えているうちにあっという間に9時が回っていた。


明日も学校だし、あまりダラダラしてはいられない。


「聡、私先にお風呂入ってくるね」


「あぁ」


まだ歌番組に釘付けになっている聡はこちらを見ずに返事をする。


私はそのままお風呂へと向かったのだった。
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