秘密恋愛短編集
その言葉を聞いてぼんやりとした頭でただ頷いた。


そっか、そういうこともあるよね。


だからベッドに近づいてきて、私の隣に枕が置かれたときに初めて「え?」と、声を上げていた。


「だから、一緒に寝よ?」


そう囁かれたときにはすでに聡は私のベッドの中に潜り込んできていたのだ。


聡の体温を間近に感じてようやく目が覚めた私は「ちょっと、なにしてんの!?」と、大声を上げて飛び起きようとした。


しかしガッチリと体を抱きしめられて身動きが取れなくなっていた。


「言ったじゃん。一緒に寝よって」


可愛く言われて心臓がドクンッと跳ねる。


暗くて聡の顔はよく見えないけれど、意地悪く笑っていることが想像できた。


「な、なに言ってんの!? そんなの無理に決まってんじゃん!」


ふたり一緒のベッドなんて、眠れるわけがない!


ジタバタともがいてベッドから抜け出そうとしてみたけれど、うまく行かない。


私を抱きしめている両手はたくましくて、とても簡単には逃げ出すことができないのだ。


「じゃあ、キスして?」
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