秘密恋愛短編集
☆☆☆

ふたり一緒に登校して席についたとき「そのクマどうしたの?」と、友人の京香が声をかけてきた。


昨日一睡もしていないから、ヒドイ顔になっていることは十分わかっている。


「うん大丈夫」


「寝てないの?」


「まぁ……そうだね」


その理由は説明できないけれど、頷いておく。


京香は私の家庭の事情を色々と心配してくれているけれど、今のところ及川親子との関係は順調だった。


ただ少し聡が意地悪ということを除けば。


「そっか、よかったー。心配してたんだよ」


「ありがとう。でも今の所大丈夫だよ」


「うん。寝不足みたいだけれど、元気なのはわかるから安心した」


京香はそう言って微笑んだ。


「でもやっぱり寝不足なのは好きな人と同じ家に暮らしているから?」


声を小さくしてそう質問されて途端に頬がカッと熱くなってしまう。
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