秘密恋愛短編集
「だって、聡が初めてだなんてそんなの……!」


「俺だって、ずっと好きな人がいた。初めては全部その人とって決めてたんだ。だから、まだなにもしたことがない」


早口で言う聡の声で少し照れているように聞こえて、首を捻ってその顔を確認した。


聡は私と同じように耳まで真っ赤に染まっている。


「それ、本当に?」


「あぁ。初めて好きになった子は高校に入学してからできた。その子は重たいダンボールの箱をひとりで運んでて、その姿がけなげで可愛くて、気がつけば好きになってた」


それって……。


私が聡を好きになったときと同時期だ。


そして私は重たいダンボールを持っていた。


「でもまさか、その子と兄妹になるなんて思ってもいなかった。俺、正直あまり知識がなかったから禁断の恋とかになるんじゃないかってめっちゃ焦ったんだ」


そう言って聡は笑った。
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