秘密恋愛短編集
☆☆☆

友人の貴美子は時折「今のままでいいの?」と聞いてくる。


いいわけがない。


このまま雅子にいいように使われて、いつかそれがエスカレートしてしまうのではないかとハラハラしながら生きていくなんてつまらない。


だけど、じゃあどうしろっていうんだろう?


貴美子だって私と同じで雅子になにか言われて逆らった試しはない。


ふたりともそれがわかっているから、いくら心配されても貴美子との会話は平行線のままで解決策を見つけることはできないまま終わる。


私はスマホのカメラを覗き込んで撮影対象をできるだけ中央へ入れた。


そして何度かシャッターを切る。


撮影対象である悦司は自分が取られていることなんて気が付かず、友人と一緒に廊下を歩いている。


周囲には他の生徒たちもたくさんいるから、柱に隠れている私には気がついていない。


「これでいいから」


何枚から写真を取り、スマホから視線を外す。


少し緊張したせいで汗が出てメガネがずれてしまいそうだ。

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