秘密恋愛短編集
メガネを外して鼻の頭の汗を拭おうとしたそのときだった。


「今、俺のこと撮った?」


頭上からそんな声が聞こえてきて心臓が止まりかけた。


今の声って……。


聞き覚えのある声に恐る恐る顔をあげると、そこには腕組みをしている悦司がいた。


体からスッと血の気が引いていく。


今まで気が付かれることがなかったのに、どうして!?


「お前、池田ミチ? なんでお前が?」


悦司が怪訝そうな表情になる。


さすがに同じクラスだから名前と顔くらいは覚えていたみだいた。


「ち、違います!」


咄嗟にわけのわからない嘘をついて逃げ出そうとする。


しかし手首を掴まれて引き止められてしまった。


「は、離して!」


「なにか事情があるんだろ? 聞いてやるよ」


そう言われて一瞬心がゆらいだ。
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