秘密恋愛短編集
呆れたその声は、隠し撮りを命令してきた《誰か》についても心当たりがあるみたいで、重たいため息を吐き出した。


「よかったぁ、怒られるかと思ってたんだ」


自分はお咎めなしだとわかった私はホッと胸をなでおろす。


相手が物わかりのいい人でよかった。


一応写真もとれたし、もう私の役目はこれで終わりだよね?


そう思って教室へ戻ろうとしたときだった、悦司が回り込んできて私の前に立ちはだかった。


「え、なに?」


話はもう終わったはずだ。


これいじょうここにいてもやることはない。


早く教室に戻って本の続きを読みたいんだけど。


「隠し撮りしておいてなにもなしかよ」


不服そうな悦司の顔にとまどう。


だってさっきは気が付かなかったフリをしてやるって言った。


それって私になにも求めないってことじゃなくて?


やっぱり、謝罪くらいはしなきゃダメだった?
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