秘密恋愛短編集
怯えて縮こまりながらも質問する。


すると悦司は私の前で立ち止まり、そして身長をあわせて膝を曲げた。


「メガネを外せ」


は……?


予想外の要求に頭がついていかない。


もちろん、動きもついていかなかった。


「メガネ?」


聞き返すのと、悦司が私のメガネを強引に外したのはほぼ同じタイミングだった。


メガネのない視界は悪く、あっという間に教室内の風景がボヤけてしまう。


すぐ近くにいるはずの悦司の顔もしっかりとは見えなくて、輪郭があやふやになった。


私の視力はかなり悪く、メガネなしでの生活はできないのだ。


「ちょっと、なにするの?」


両手を伸ばしてメガネを取り戻そうとするけれど、どこかに隠されてしまったようで、手に触れるのは悦司の手のひらだけだった。


「ねぇ?」


一体なにがしたいのかわからなくてだんだん怖くなってくる。
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