秘密恋愛短編集
悦司はさっきから黙ったままだし、まさかメガネを壊されたりしてないよね?


そんな不安がよぎったとき、悦司が大きくため息を吐き出した。


「そういうことか」


ぽつりとつぶやく。


なにがそういうことなのかわからないが、それよりも先にメガネを返してほしくて手を空中にさまよわせる。


その手を悦司が握り締めたかと思うと、手の上にメガネを置かれた。


ようやく戻ってきたメガネにホッと胸をなでおろす。


目のいい人からすればずっと目隠しをされているのと同じ状態だったんだ。


ようやく視力が戻ってきたので「どういうこと?」と、落ち着いて質問することができた。


悦司は少し頬を赤くしているけれど、なにがあったのか私には全然わからないままだ。


まばたきをしてジッと悦司を見ていると、悦司は赤い顔で左右に首を振った。
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