秘密恋愛短編集
「嫌なことはなにもないよ。ただ、悩みならある」


「悩み?」


それは私が聞いて解決するようなことかな?


いや、解決まで行かなくても、話すことで少しでも楽になったりしないかな?


「……好きな子ができた」


え……?


悦司の言葉に私は目を見開いた。


悦司は今目の前にいるのに、それがどんな表情をしているのかわからない。


本気で言っているのか、それとも嘘なのか。


でも、人気者の悦司が恋をすることは大いにあり得ることだった。


だって、毎日毎日素敵な女の子たちが近づいてくるんだから。


今まで浮いた話がなかったけれど、そっちのほうがふしぎだったんだと思えた。


「そ、そうなんだ……」


別に、悦司に好きな人がいたって関係ないはずなのに、なぜか胸の奥がギュッと締め付けられて苦しくなって、声が掠れてしまった。


今にも涙がこぼれ落ちてしまいそうなくらい、目の奥が熱くなってくる。
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