秘密恋愛短編集
咄嗟に悦司から視線を外してなんでもない様子を装う。


「ほんっと可愛いな」


ポツリと聞こえてきた声に顔をあげようとした瞬間、ポンッと頭に暖かなものを乗せられていた。


え!?


私今悦司に頭を撫でられてる!?


よしよしと、子供にするみたいに優しく撫でられて混乱する。


どうすればいいんだろう?


なにか反応したほうがいいのかな?


冗談やめてよぉ、みたいに笑ってごまかすとか?


グルグルと頭の中で考えるけれど結局なにもできずに硬直してしまい、カッと顔が熱くなるのを感じる。


「さて、そろそろ帰るか」


さんざん人の頭をなでて満足したのか、悦司はそう言うと私にメガネをかけた。


ようやく見えた悦司は優しく微笑んでいて、いつもの王子様なのだった。
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