秘密恋愛短編集
☆☆☆

ほんっと可愛いな。


確かにそう言ったよね?


私の聞き間違いじゃないよね?


家に帰ってからも何度も空き教室での出来事を思い出して頭から離れない。


あの場所で可愛っていうのはなにに向かっての言葉だったんだろう?


私と悦司しかいない教室だったから、やっぱり私に向けて?


「違う違う! そんなことあるはずない!」


ベッドの上でクッションを抱きしめてブンブンと左右に首を振る。


きっと窓の外に取りでも飛んでいたに違いない。


悦司はその鳥を見て可愛いと言ったんだ。


それなら納得できることだった。


だって、こんなメガネの地味女子のことを可愛いなんていう男の子がいるなんて思えない。


相手は人気者の悦司だし、なおさらありえないことだった。


でも……。


それならどうして頭をなでたりしたの?
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