秘密恋愛短編集
可愛いと言ってくれた。


「あれは全部ウソだった?」


それとも、悦司にとってはどうってことのないことだったのかもしれない。


女子に向けて可愛いと発言するのは挨拶のようなものだったのかもしれない。


「全部、私の勘違い……」


そう思うと情けなくて恥ずかしくて笑みがこぼれた。


同時に我慢していた涙も頬を流れ落ちていく。


そうしてようやく自分が悦司に恋をしていたのだと理解した。


こんなに胸が苦しくて、頭を撫でられただけで嬉しくて。


そんな感情になるのは恋をしていたからだったんだ。


「今更気がついても遅いけど」


つぶやいてへへっと笑って見せる。


悦司を好きだとわかった瞬間に失恋だ。
< 81 / 121 >

この作品をシェア

pagetop