秘密恋愛短編集
「悪いな桃子」

英祐はそう言って大きな手のひらを私の頭の上にポンッと乗せる。


それはいつも英祐が私にやっていることで、ついなんの疑いもなく受け入れてしまいそうになる。


「なにしてるの。ここは学校でしょ」


慌てて身を引き、小声で注意する。


一応、私達が知り合いであることはみんなには秘密にしてある。


教育実習生が女子生徒をえこひいきしているなんて噂が流れたら、英祐の実績に傷がついてしまうからだ。


これはふたりで昨日取り決めたことなのに、英祐はそれもすっかり忘れてしまっていたみたいだ。


「そうだな。ごめんごめん」


頭をかくその姿には全然反省している様子は見られなくてため息を吐き出した。


やっぱり私がしっかりしなくちゃ!
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