秘密恋愛短編集
☆☆☆

私の心配をよそに英祐絵の評判はまたたく間に広がっていった。


3年生に限らず、2年生、1年生の間でもカッコイイ先生がいると話題になり、いっときは女子生徒が職員室に集まってきてしまい、本当に用事のある生徒の邪魔になってしまったくらいだ。


決して英祐のせいではないけれど、他の先生達からの印象としてはあまりよくなかったかもしれない。


でも、今更どうするわけにもいかないし……。


「メガネとかで顔をごまかすように助言しておけばよかった」


「桃子、なにブツブツ言ってるの?」


ハッと我に帰って顔を上げると友人の貴美子がお弁当を広げたまま不思議そうな顔をこちらへ向けていた。


今は昼休憩中で、みんな好き好きにお弁当や買ってきたパンなどを食べている。


「あ、ごめんなんでもないの」


最近英祐のことばかりを考えてしまって、ついボーッとすることが増えてきた。


早く教育実習期間が終わってくれないと、こちらの生活がままならない。


「なんだ、桃子も玉垣先生のことを考えてるのかと思った」
< 89 / 121 >

この作品をシェア

pagetop