【短】みかん
彼は、
「ほれっ。お待たせ」
指先を赤くしながらも、わたしの分まで皮をむいてくれた。
「ありがと…」
凍ったみかんをアイスと言ってしまうのは、なんだか“子供だまし”な気もするけど、ね。
「うーっ。つめてっ」
美味しそうに凍ったみかんを頬ばる彼が、かわいくて。
“こたつにはみかんか、それともアイスか”
なんて、くだらないことでムキになる彼が、大好きで。
「オレたちには“冷凍みかん”で決まりだな」
春のひだまりを思い出させる彼の笑顔が、愛しくて。
できれば、ずっと、ずっと一緒にいたいと思ってるの。
「あ。もう一個、食う?」
「……いらない」
【END】