【短】みかん

「うわっ。ついに出た」


5日前、仕事帰りに彼の部屋を訪れたわたしは、部屋の真ん中を陣取るそれを見て目を丸くした。

半ば呆れ顔のわたしに、

「フフン。いいだろ」

満足そうな笑顔を見せる彼。


寒がりな彼にしてみれば、11月上旬のこの時期まで、よく我慢していたと思う。


「はぁ~。落ちつく…」

彼はそれに体を潜りこませると、すぐにでも眠りについてしまいそうな、トロンとした目をする。


いくらコンパクトサイズとはいえ、6畳ほどのこの部屋では、無駄に大きく感じてしまう。


「…まったく、も~っ。ばっかみたい」

と言いつつも、暖かさを求めて、ついついチョコレート色の布団をめくってしまった。

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