【短】みかん

「ばかっ。そんなにめくるなよ。そ~っと入れ、そ~っと」

ムクッと起き上がった彼が、盛り上がってしまった布団をパンパンと手で叩き、直す。

「ホカホカが逃げるじゃん…」

唇をとがらせた彼が、目の前に転がっていたみかんに手を伸ばした。

そして、ふにゃっと溶けてしまいそうな表情で、

「やっぱ、こたつにはみかんだ~」

実家から送られてきたというそのみかんの皮を、ゆっくりとむいていく。


「……アイス」

「へっ!?」

わたしのひとことに、怪訝な顔をした彼。


「こたつに入って食べるのは、アイスでしょ?」

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