【短】みかん
ポスッ、ポスッ。
丸めたパンフレットで自分の肩を叩いていた彼。
「もうそろそろいいんじゃないの?」
笑いすぎて流れ出た涙を、横になったまま指で拭っていたわたしに向かって冷たく言い放った。
「あー、おかしかった」
と言いながら、のそのそと起き上がったわたしは、転がった拍子にみだれた髪を手で撫でつつ、吸い込んだ空気を大げさに吐き出して呼吸を整える。
「ったく…。おまえが変なこと言うからいけないんだ」
血色のいい唇をとがらせた彼は、手にしていたパンフレットを床にポンっと放ると、再びみかんの皮をむきはじめた。