【短】みかん
“こたつにはみかんか、それともアイスか”
彼の部屋にこたつが出現した日から5日後の、日曜の昼下がり。
わたしたちはこたつに足を突っ込んで、またもや、
「みかん」
「アイス」
と言い争っていた。
《“邪道”って言葉、知ってたんだ》
わたしにそう言われてから、何も言わなくなってしまった彼。
どうやら今回も、わたしの“勝ち”らしい。
陽の光で薄茶色に輝く彼の髪に、そっと手を伸ばしたわたしは、
「ねぇ?アイス、買っておいてくれた?」
拗ねた顔のまま、ふたつめのみかんをたいらげた彼に尋ねた。