「星をきみにあげる」

「星をきみにあげる」


僕たちはあの日、満天の星空を見上げていた。

風はなかったと思う。

雲ひとつない、満月が綺麗な夜。

隣に座るルナの肩が今にも触れそうで、少しだけ緊張した。だけどルナはそんなこと一切気にしていなさそうだ。頭上に広がる宝石の海を眺めながら、嬉しそうに口角をあげていた。

「ねえ知ってる?」

ルナの声は凛と澄んでいて、静謐な夜に耳にするには、あまりにも清らかだった。

彼女は星を観たままだったので、僕も空から視線を逸らさずに返事をする。

「何?」

「今見てる星の光は、何年も、何十年も、いや何億年も前の光を放ってるものもあるんだよ」

「それぐらい知ってるよ」

「どうして」


まるでこの世界に初めて来たみたいな反応をする彼女は、星空から視線を逸らして僕を見た。


「どうしてって……。生きていたらそれぐらい、学校で習うだろ。きみの高校では、教えてくれないの?」

「いや、翔が知っていたことにびっくりして」

「きみって僕のこと舐めてるよね」

「あはは、大正解~」

相変わらずムカつくな~、なんて思いながらも、ルナの無邪気な笑顔を見たらどうでもよくなってしまうのだから、彼女の笑顔には何か不思議な効果でもあるのだろうか。

「ねえ翔。私が絶対にできないことをお願いしてもいい?」

「やだ」

「星をとってほしいな」


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