「星をきみにあげる」



時々考える。

『普通』ってなんだろう、と。

「見ろよ、鈴木がまた人形の服作ってるぜ」

「うわあ……引くわ」

昼休みの友人たちの興味の先は、教室の隅でひとり、人形の洋服を作っているクラスメイトの鈴木悠真にあった。彼はいつも昼休みになると、周囲の声何て聴こえないかのようにああして過ごしている。

「普通教室であんなことできないよな」

「ああ、てか普通男が女ものの、ましてや人形の服なんてつくらなくね?」

普通、ふつう、フツウ。

『普通』ってなんだろう。

友人達の話に返事が出来ないふりをして、俺は購買で買うなら定番ともいえるアンパンを大きく口に含んだ。それこそ、アンパンをモチーフにしたキャラクターみたいに、頬をぱんぱんに。

机を向かい合わせて座る目の前の友人達もそんな俺をみて、げらげらと笑う。

「あはは、何やってんだよ」

「ったく、ほら牛乳飲めよ」

「なんでお前みたいなやつが吉田に好かれるんだろうなー。俺も吉田と付き合いてー」

話題が逸れたことに安心して、俺は口の中にあるアンパンを一生懸命噛んで飲み込む。

彼らが言っているのは、言ってしまえば悪口だったが、あいにく俺は『そんなこと言うなよ』という勇気を持ち合わせていないし、彼らとの友情が壊れることすら怯える弱虫だ。

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